データ復旧では、ドライブの状態が復旧率を大きく左右します。
そのため、不良セクタの影響をできる限り最小化することが重要です。

不良セクタは、単に「読めない場所」というだけではありません。
壊れかけたドライブでは、不良セクタにアクセスするたびに、ドライブに残されている余力が少しずつ削られていくと考える必要があります。

無理に何度も読み出しを試みると、状態がさらに悪化し、まだ読めるはずだった領域まで読み出せなくなるおそれがあります。
そのため、データ復旧では、不良セクタへ不用意にアクセスしないことが非常に重要になります。

当サービスでは、FromHDDtoSSDなどの自社開発ツールを活用し、日々、ドライブの挙動や不良セクタの変化を調査しています。

特に重視しているのは、壊れかけたドライブにおいて、どのタイミングで大きな状態変化が発生するのかという点です。
そのため、試験用の故障ドライブを用いて、継続的に検証を行っています。

不良セクタの中には、単に読めないだけでなく、アクセスすることでドライブ全体の状態に大きな変化をもたらすものがあります。
このようなセクタへの対応を誤ると、復旧可能性そのものを下げてしまう場合があります。

つまり、復旧率を左右するのは、どれだけ多く読み出すかだけではありません。
どのセクタに、どの順番で、どの程度アクセスするか。その判断が、データ復旧の成否に大きく関わります。

当サービスでは、蓄積した検証結果や症例をもとに、不良セクタの影響を最小限に抑えながら、ドライブに残されたデータをできる限り安全に回収することを目指しています。

ドライブに対してベンチマークを実施し、その結果からドライブの状態や寿命傾向を判断する手法があります。

このとき重要になるのが、正常な数値からどれくらい離れているのか、という点です。

当サービスでは、この差を乖離率として捉え、グラフ化することで、ドライブの異常傾向を瞬時に見抜ける仕組みを開発しております。

たとえば、同じ種類や同じ容量帯のドライブであっても、正常な個体であれば一定の範囲に収まる傾向があります。
しかし、動作不良や全体的な劣化が進んでいるドライブでは、その数値が正常範囲から大きく外れることがあります。

そのような変化を、乖離率ベンチマークによって可視化します。

ただし、ベンチマークで見抜きやすいのは、全体的な性能低下や動作不良の傾向です。
不良セクタのような局所的な損傷については、ベンチマークだけでは十分に検出できない場合があります。

そのため、完全スキャンなどのドライブ検査は、やはり必要になります。

一方で、乖離率ベンチマークには、検査時間が短く、扱いやすいという利点があります。
短時間で全体的な異常傾向を確認できるため、日常的な状態確認や、大量のドライブを扱う場面では非常に有効です。

つまり、乖離率ベンチマークは、完全スキャンの代わりではありません。
完全スキャンや統計スキャンと組み合わせることで、より実用的な故障判断につなげるための補助的な検査機能です。

当サービスでは、完全スキャン、統計スキャン、そして乖離率ベンチマークなど、ドライブの状態を調査するための機能を豊富に用意しております。

それぞれの検査には、得意な領域があります。
完全スキャンは、全領域を確認するための検査。
統計スキャンは、短時間で傾向を把握するための検査。
乖離率ベンチマークは、正常値からのズレを可視化し、全体的な劣化傾向を素早く見抜くための検査です。

これらの特性を理解し、目的に応じて組み合わせることで、短時間かつ効果的なドライブ検査を実現できる仕組みを構築しております。

現在のパソコンでは、「デフラグ」を意識して実行する機会は、かなり少なくなりました。

そもそも、今の利用者にとっては、
「デフラグとは何か」
という話になることも珍しくないかもしれません。

デフラグとは、ドライブ内でバラバラに配置されたファイルの断片を、できるだけ連続した状態に並べ直す作業です。

ファイルは、ドライブ上では「セクタ」と呼ばれる最小単位に分かれて保存されます。
理想をいえば、ひとつのファイルは連続したセクタにまとまって保存される方が扱いやすくなります。

しかし、実際にはそう単純ではありません。

途中にすでに有効なデータが保存されているセクタがある場合、その場所を勝手に動かすわけにはいきません。
そのため、空いている領域を使いながらファイルを書き込むことになり、結果としてファイルが複数の場所に分かれて保存されることがあります。
これが断片化です。

断片化していても、通常の使用では問題ありません。
ファイルシステムには、そのファイルがどの順番で、どの場所に保存されているのかを示すメタ情報が存在します。
そのメタ情報をもとに、分散したデータを正しい順序で読み出し、ひとつのファイルとして再構成できるためです。

つまり、ドライブに保存されたデータは、実データそのものと、それを管理するメタ情報によって成り立っています。

ここで重要なのが、最近のファイルシステムの傾向です。

同じファイルシステムであっても、OSや実装の更新によって、少しずつ挙動は改良されています。
当サービスでは、復旧作業や統計解析を通じて、最近の環境では、以前よりも断片化しにくく、さらにデータが特定の範囲にまとまりやすい傾向があることを確認しています。

もちろん、すべてのドライブがそのような配置になるわけではありません。
中には、ファイルが離れた場所に分散しているケースもあります。

特にメーカー製パソコンでは、通常とは少し異なる配置傾向を示すものも見受けられます。
その理由については、まだ完全には断定できませんが、実際の復旧現場では、そのような配置パターンが存在することを確認しています。

それでも、最初の領域やメタ情報を解析することで、データが存在する位置や配置傾向は、ある程度推定できるようになっています。

データ復旧では、この断片化の統計が非常に重要です。

故障したドライブには、残された余力があります。
その余力は無限ではありません。
必要のない場所へ何度もアクセスすれば、状態が悪化し、本来読めたはずのデータまで失われるおそれがあります。

このため、データが存在する可能性の高い場所を正確に見極め、必要な領域を優先して読み出すことが重要になります。

当サービスでは、ファイルシステムのメタ情報、断片化の傾向、データ配置の統計をもとに、壊れかけたドライブへの不要なアクセスを抑えながら、必要なデータを効率よく取り出す復旧作業を行っています。

セクタの動作とドライブ状態の変化について

弊社のエミュレート機能ではドライブを実際に動作させながらセクタ単位の振る舞いを観察することが可能です。ドライブ故障の統計データ(ビッグデータ)を活用して再現性の高い解析を行いながらこの仕組みはやがて「S.M.A.R.T.コンセンサス」として結実しました。

図1



解析初期ディレクトリ再構築を開始した直後の状態は良好でスタビリティ指数(※図1 右下赤丸)は100を示しながらドライブは[UP](上向き)に安定していました。この時点ではデータ復旧の可能性は極めて高いと判断できます。

図2



状況は一変。不良セクタとの衝突

しかしスキャンが進むにつれて不良セクタに到達した瞬間(※図2 左下赤丸)ドライブの挙動は急変します。スタビリティ指数は[DOWN]へと反転(※図2 右下赤丸)。

この[DOWN]はドライブ状態の悪化を意味し、内部的には戻りが困難な領域へと突入している可能性があります。

「読み出し不能」に至るプロセス

グラフの形状を見ていただくと[UP]の安定状態から急激に低下し回復困難な不安定状態となっているのが明らかです。

図3



判断ミスが致命的な結果に

一度[DOWN]に転じたドライブは仮に回復しても5割程度までが限界となるケースも多くやがて「読み出し不能からドライブ認識不能」へと進行するリスクがあります。

「まだ認識できているから大丈夫」と早計に判断してしまうと取り返しのつかない状況に陥る可能性があります。

事前に検査を実施していれば復旧成功率90%以上が見込めた案件でも最終的な復旧率が40%前後にまで低下することがあります。

まとめ

不良セクタの影響はドライブ全体の安定性に深刻な影響を与える場合があります。早期診断と慎重な処置が成功率を大きく左右します。