
【ドライブ検査: 統計スキャン】
FromHDDtoSSD
SSD/NVMe
エラーの境界が曖昧なドライブ
SSD/NVMeの故障直前には、不思議な現象が発生する
― 完全スキャンでは見抜けない“不確定なセクタ”の実態
SSD/NVMeの故障は、HDDとは異なる独特の兆候を伴って現れます。
それは、「読めたり読めなかったり」「書けたと思ったら読めない」といった、状態が一定しないセクタの存在です。
■ 機械と電子の違い:HDDとSSDの本質的な構造差
- HDDは機械的な読み書きを行うため、セクタの状態は常に「正常 or 不良」と明確です
- 一方でSSD/NVMeは電子的な制御+内部アルゴリズムに基づいて動作しており、
読み出しが省略されたり、アクセスが分散処理されたりと、状態の評価が複雑になります
■ 完全スキャンの限界:検査している「つもり」でも…
完全スキャンは、全セクタを呼び出して検査する従来型の方法ですが、
SSD/NVMeではアルゴリズムにより、アクセスが“飛び飛び”になってしまう現象が確認されています。
▼ 実例:NVMeでの検証結果
- 完全スキャンを96%で一度中断し、続きから統計スキャンを開始
- その結果、上部には「完全スキャン結果」、中央には「統計スキャンへのマッピング結果」、
下部には「統計スキャンによる解析精度」が表示されました
全セクタを検査したにも関わらず、解析精度が“ガタ落ち”しており、実際には一部しか検査されていなかったことが明らかになりました。


■ 誤認する安心感:オールグリーンの落とし穴
完全スキャンだけでは一見「すべて正常=オールグリーン」に見えることがあります。
しかし、それが「読み出されたセクタだけ」での結果であれば、数日後にWindows起動不能となっても不思議ではありません。
■ 注意:Windows標準「完全なフォーマット」も同様です
Windowsに付属する「完全なフォーマット」も、クイックフォーマット後に全セクタを検査していますが、実際にはフラッシュへの物理アクセスが省略されるケースがあり、安心とは限りません。
■ SSD/NVMeでは「統計スキャン」が不可欠
その理由:
- SSD/NVMeの挙動には「確定していないセクタ(不確定領域)」が存在するため
- 完全スキャン後に結果を統計スキャンにマッピングすると不安定な箇所が可視化されるため
- 統計スキャンは、検査精度という別軸からドライブの信頼性を評価できるため
■ 「完全スキャンと統計スキャンが一致するか」で判定する手法
- 統計スキャン結果と完全スキャン結果が完全一致(=同相)する場合のみ、完全スキャンでも安心できると言えます
- しかし、それは実行後でなければ判断できないため、最初から統計スキャンの実行を推奨いたします
■ 例外:HDDには統計スキャンは不要
HDDは、セクタ単位の読み書きが必ず機械的に発生するため、常に「正常 or 不良」という確定した値(定数)が得られます。
よって、統計スキャンの結果も常に完全スキャンと一致することが事前に保証されており、完全スキャンだけで十分です。
■ 統計スキャンで信頼性を可視化する
統計スキャンでは、全区間を対象に解析精度(信頼度)を数値で可視化します。
この解析精度が下の図においてしっかりと上昇している=オールグリーンかつ精度高であれば、そのSSD/NVMeは安定していると判断できます。

■ 結論
ストレージ種別 | 推奨スキャン方式 | 理由 |
---|---|---|
HDD | 完全スキャン | 結果が常に定まり、統計スキャンと一致が保証される |
SSD/NVMe | 統計スキャン+完全スキャン | 結果が不確定な領域があるため、両面からの確認が必要 |