7, ビット腐敗に関する考察
■ 7a, ビット腐敗について
ドライブには、いつの間にか読み出せなくなるセクタがあります。
これらは「ビット腐敗」と呼ばれて、そのまま定義されております。
これは、長期保管データなどが該当する、ほとんどアクセスされないデータが犠牲となります。
■ 7b, さらに、書き込めるが読み込めないセクタについて
上述の7aに加え、ドライブにデータは書き込めるが、直後から読み出せない場合もあります。
デジタルデータは一部でも欠けると壊れてしまうため、僅かな損傷が大きな影響になります。
ビット腐敗の症状が出始めますと、アクセスが遅くなる症状および、読み込み不能セクタが出始めます。
初期段階で気が付くことができれば、データを失う事なく退避できます。ただし、注意点がございます。
□ バックアップを急ぐ必要がありますが、ビット腐敗が発生した場合は、
イメージのコピーではなく、必ず「普通のコピー」を利用します
ビット腐敗の部分には、こちらの弊社ツールで判別される「危険」セクタを含むため、少しずつコピーいたします。
イメージタイプは、このような「危険」セクタを巻き込んで壊してしまう可能性があるため、避けます。
なぜならば、全体をイメージ化する処理が優先されるため、ビット腐敗の部分で処理に失敗のち、ドライブの状態を悪化させます。
地道な少しずつのコピーで大切なデータを逃します。
時間もかかりますし、スマートではないかもしれませんが、気にせずこつこつとコピーで構いません。
■ 7c, ドライブにアクセスできるから、「正常」とは解釈できません
ドライブにアクセスのち、ファイル一覧が見えれば「正常」でしょうか?
アクセスは、BPBおよびドライブに記録されているメタデータ(木構造)からはじまります。
そして、目的の階層に辿り着きましたら、その部分のデータ一覧(レコード)を読み出して、キューが完了いたします。
つまり、辿り着いたらそこでアクセスが完結いたしますので、それ以上の読み込みはありません。
これは、はじめのアクセスに成功しても、その成功は「ごく一部のセクタに過ぎない」ことを意味いたします。
また、日頃からよく使われるファイルのアクセス回数が伸びますが、保管用データはその逆となります。
この性質により、ドライブの検査が必要となってきます。
データ復旧機能では、その部分を「メタデータ」と呼びまして、そこからデータ再構築を実施いたします。
■ 7d, ビット腐敗はRAIDに対しましても脅威
RAIDにとって「ビット腐敗」は「脅威」そのものです。
RAIDは、リビルドに対して、生きているドライブの「全セクタ完全性」を求めます。
いつの間にか任意の場所からビット腐敗が発生いたしますと、これが、リビルドを失敗させます。
リビルドできるか分からないものをバックアップなしで運用する事は、それこそ、いつかデータを失います。
ビット腐敗には「注意」ではなく「常にバックアップ」をお願いいたします。注意しても劣化は避けられません。
■ 7e, NASに対しましても脅威
NASは、ネットワーク越しでアクセスする性質上、どうしても転送速度が低下いたします。
これにより、ドライブの変化に気が付きにくく、あまり利用されないデータの割合が高い場合、「ビット腐敗」の脅威にさらされます。
ビット腐敗には「定期的なバックアップ」をお願いいたします。ドライブの劣化自体に気が付く時間がないためです。
■ 7f, 考察
このように自然発生する不良セクタは「ビット腐敗」に分類され、コンセンサスの解析要素に加えております。
保管されていた大切なデータが、音もなく崩れていく「不良セクタ」という認識で問題ありません。
このビット腐敗に対抗するため、2011年より「ヘッドレストレーション+SSD機能」をご提供しております。
2018年より、ヘッドレストレーション+SSDに、「S.M.A.R.T.コンセンサス」を包含させた新しい機能をご提供いたします。
また、9章で取り扱います「セクタの振る舞いに関する考察」で使用する「不良セクタ危険回避」の技術も包含させ、必要なデータをピンポイントで狙える機能も追加いたします。