データ復旧を実施される際に最も気になるドライブの状態について「状態変化を掴むサイン編」としてまとめてまいります。今回は基本的(状態変化を先読み)となる「状態変化サイン1(崩壊)」「状態変化サイン2(底打ち)」を詳しくご案内いたします。

壊れかけドライブを悪化させずに、データを「悪化から逃げ切る」ように取り出す。 データ復旧で最も難しい部分じゃな。これで全てが決まると断言しても良い。
そうなんですか?クリーンルームの作業が難しいと聞きましたが?
ホコリは大敵だから、そこさえしっかり(クラス100)していれば問題はない。実験用ドライブは……、元は「正常中古品」ゆえ、金額的に高く付くのが痛いんじゃが、 復旧成功につなげるために惜しみなく投入(分解)しておるぞ。
ドライブの容量が大きくなると、そう簡単には「悪化」から逃げ切れない・・とか?
その通り。3.0TBの場合は、格納されているデータ量にもよるが、 基本的に3.0TBまできっちりスキャンできないと綺麗に出ないぞ。 だから途中で悪化させてしまうと、そこで復旧ができなくなる。 少し前までは大容量でも「1.0TB」だったから、このあたりを詰める技術が本当に大事になってきておる。このあたりがおろそかになっている場合、 「復旧を終えられない」「スキャンが先に進まない」とか「開けても無理」などの不可解な理由で 復旧を断念されてしまう。このあたりは「運任せ」でデータ復旧を実施しているかもな。
でも、こればかりは「運任せ」でも仕方が無いのでは……?
自分で自分のドライブを復旧する場合は運任せでも自己責任じゃが……、 お客様の大切なドライブ(データ)を「運任せ」で復旧・・とはいかないぜよ。あと、自分で復旧される場合も「運任せ」で良いという訳ではない。 最低限やれることはやらないと(例:不良セクタ危険予知)、悔いが残ってしまう。 データが見えていたので、あのときああしていれば・・これが心に何ヶ月も残ってしまうのはダメ。
しかし、どうやって……?  壊れかけドライブの動作挙動など、解析しようがないのでは?
壊れかけドライブの動作挙動など、解析しようがない……、 その点は何回かクレームを入れられた事があった。しかし、それは「そちらの思い込み」と毅然に返したぜよ。
実際にデータ復旧サービスではなく、そのような挙動解析のご依頼もあった。そこで、今回から壊れかけドライブの状態変化サインを紹介していくぜよ。 ちゃんと調べれば、やっぱりあるんじゃよ、サインがね。
簡単な例からお願いいたします。どうせ、沢山あるでしょうから?
まあ、焦りなさんな。まずは「読み込み不能セクタ」による状態変化サインからじゃな。 「読み書き不能セクタ」ではない。 名前は似ておるが、異なる性質を持つ不良セクタだから、注意。
[状態変化サイン1(崩壊)]:
転送速度が平均的で、正常セクタが続くさなかで突然「読み込み不能セクタ」が出てきた場合、 それは「状態が下向き」となる大きなサイン。これは絶対に見逃してはならん。 「崩壊」の名の通り、ここから崩壊し始めます。
[状態変化サイン2(底打ち)]:
転送速度が低下しているさなか(セクタは正常)、突然「読み込み不能セクタ」が出てきた場合、 それは「状態が上向き」となる大きなサイン。大体は「諦めかけた頃」に出るから、辛抱強さが重要じゃ。
サイン1は「崩壊」ですか!?そこまで正常に読めているならば、1個くらい……と思ってしまいます。
それが命取りとなる。 ちなみに、崩壊に巻き込まれてからドライブを止めようとしても、もう後の祭りじゃ。 ある程度は生きていたヘッドも巻き込んで、豪快な音をガリガリ立てながら、認識不能に向かうぞ。さらには、その例で業者にて復旧不能となったドライブも多く見ておる。 そのほとんどは、壊れたヘッド先端が内部のプラッタ表面を真っ黒く焼いた後の状態だった。 もちろん、この状態にされてからご依頼いただいても再復旧はできない。
でも……、頭で分かっていても、なかなか止められませんよね?  目の前にデータがあるならば、このまま一気に・・という気で頭も心も一杯になってしまいます。
その通りじゃな。 目の前に欲しいデータがあるのに、順調なスキャンを止めて一旦手を引く判断を出せる方はまずいない。 だから、機械的に行う仕組みが大事です。 データ復旧サービスではもちろん(機械学習によるデータスキャン最適化システムの「学習スキャン」)、 データ復旧ソフトウェア(AI完全自動ドライブ復旧システム)でも「不良セクタ危険予知」が処理いたします。
サイン2はどうなんでしょうか?回復するならば、このまま放置でOKですよね?  別に気にかける必要はないと思いますが……?
長時間、転送速度が力尽きそうな状況で、不良セクタ(読み込み不能セクタ)が出てくるんじゃぞ……? びっくりして電源を止めてしまう方も多いと思う。だからサインとして扱う必要がある。 このような場合、ここから正常セクタが連続する可能性が高く、いよいよデータの回収……という場面かな。

状態変化サイン1(崩壊)の例:
このサインを検出した場合、その先のスキャンを慎重に進めるか、それとも仕切り直すか必ず検証いたします。細かい事でも一つ一つを積み重ねていきます。このあたりの検査が詰められない場合、データ復旧にほぼ失敗いたします。