データ復旧の研究において、再現実験は欠かせない作業です。
実際の障害と同じような状態を意図的に作り出し、そのときドライブやファイルシステムがどのように反応するのかを確認する。
この積み重ねによって、復旧方法の精度を高めていきます。
当サービスでは、ビット腐敗をエミュレートしながら、ファイルシステム内部に不良セクタが発生した状態を再現し、その状態でチェックディスクを実行すると、どのような挙動になるのかを検証しております。
このような検証は、ドライバ制御などを用いることで再現可能です。
たとえば、ファイルシステムの管理領域に読み取り不能なセクタが発生している状態でチェックディスクを実行した場合、どの管理情報がどのように書き換えられるのか。
ファイル名やフォルダ構造、サイズ情報、配置情報がどのように変化するのか。
その結果として、復旧可能性がどのように変わるのか。
このような挙動を、日々検証しております。
分かりやすい例として、ファイル自体は存在しているのに、サイズが0バイトになってしまい、アクセスできなくなるケースがあります。
これは、チェックディスク実行後に見られることがある典型的な症状の一つです。
実データが完全に消えているとは限りません。
しかし、ファイルシステムの管理情報が書き換わることで、OSからはそのファイルが0バイトとして認識され、元のデータへたどれなくなることがあります。
ここで重要なのは、論理障害と物理障害の難しさについてです。
一般的には、物理障害の方が難しいと思われがちです。
確かに、分解作業やヘッド交換、クリーンルーム作業を伴う物理障害は重い障害です。
しかし、チェックディスクが実行されたあとにファイルシステムが大きく書き換えられてしまったケースも、非常に難しい復旧作業になります。
なぜなら、単に読めないセクタが存在するだけではなく、読み取れなかったことを前提に、ファイルシステムの管理情報そのものが変更されている場合があるためです。
つまり、元の構造が壊れているだけでなく、壊れた状態をもとに新しい管理情報が上書きされていることがあります。
この場合、通常の論理復旧だけでは対応が難しくなります。
メタ情報を一つずつ確認し、実データの位置を推定し、破損前の構造を可能な限り再構築していく必要があります。
特に厄介なのは、壊れかけたドライブで不良セクタやビット腐敗が進行し、その後にチェックディスクが実行されてしまった場合です。
この状態では、物理的な読み取り不良と、チェックディスクによる論理構造の書き換えが重なります。
そのため、復旧作業では、まずドライブの物理状態を確認し、読み出せる領域を慎重に確保します。
そのうえで、チェックディスクによって変更されたファイルシステム構造を解析し、必要なデータへたどり着く必要があります。
これは、非常に手間のかかる作業です。
しかし、このようなケースも想定し、再現実験と検証を重ねております。
ビット腐敗が発生したファイルシステムにチェックディスクが実行されると、どのような損傷が起こるのか。
どの情報が残り、どの情報が失われやすいのか。
どの段階であれば復旧率を高められるのか。
そのような挙動を把握することで、実際のデータ復旧においても、より正確な判断と対応が可能になります。
壊れかけたドライブにチェックディスクが実行された状態は、データ復旧の中でも特に厄介な症状の一つです。
このため、症状を一つずつ確認し、物理状態と論理構造の両面から慎重に修復していく必要があります。
