「量子耐性」と「量子もつれ」はまったく別物です
近年、量子技術への注目が高まる中で、以下のような誤解を目にすることがあります。
「量子もつれを使えばブロックチェーンのセキュリティも向上するのでは?」
この認識は誤りです。
理由は明確で、「量子耐性」と「量子もつれ」はまったく異なる概念だからです。
❌ 量子もつれ(エンタングルメント)
- 二つの量子ビットをエンタングル状態にすると、どれだけ離れていても、一方を観測した時点で、もう一方の状態が確定します。
- この現象は「同期性」のように見えますが、任意の情報を伝えることはできません。
- なぜなら、「崩壊後の状態」は制御不可能かつ確率的であり、意味を持つ情報(メッセージ)を任意に乗せることができないためです。
つまり、「量子もつれによる通信」は存在しても、ブロックチェーンのような整合性検証・署名生成には一切使えません。
✅ 量子耐性(Post-Quantum Cryptography)
- 一方の「量子耐性」は、量子コンピュータでも解読が困難とされる暗号方式を意味します。
- これは楕円曲線暗号(ECDSA)やRSAなど、従来型の公開鍵暗号がショアのアルゴリズムによって破られることを前提に、それに耐える新たな仕組みを構築するものです。
- ブロックチェーンにおいて、署名・検証・トランザクション承認に直接利用できる実装可能な技術です。
🔒 結論
- 「量子もつれ」:量子力学的な自然現象。ブロックチェーンへの直接活用は不可。
- 「量子耐性」:暗号アルゴリズムの設計思想。ブロックチェーンにおける署名やセキュリティ強化に直接応用可能。
したがって、ブロックチェーンに導入できるのは「量子耐性」の方であり、「量子もつれ」はまったく別次元の物理現象です。
混同に注意し、実装可能な技術に基づいて議論を進めていく必要があります。