量子耐性:量子コンピュータ時代、動いていないビットコインはどうなるのか?

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量子コンピュータ時代、動いていないビットコインはどうなるのか?

量子コンピュータの進展に伴い、長年動いていないビットコインをどう処理するか、という議論が出始めています。 特に問題になるのは、ECDSAでロックされたまま放置されているBTCです。

量子耐性暗号に“移行しただけ”では守れない

仮にビットコインがプロトコルレベルでポスト量子暗号(PQC)を導入したとしても、それだけで既存のBTCが安全になるわけではありません。

というのも、既存のコインの多くは、ECDSAの鍵でロックされたままです。 ユーザー自身が移行作業をしない限り、これらのコインは依然として量子的に脆弱な状態のまま放置されます。

動かないコインの典型例:「サトシのコイン」

この問題を象徴する存在が、サトシ・ナカモトが保有しているとされる初期のコインです。 十数年動いておらず、量子攻撃の対象として最も注目されています。

提案された“極論”:バーン(焼却)

ある提案では、「移行されなかった古いコインは全てバーン(焼却)してしまうべきだ」という極論的な解決策が出されました。

しかし、これは非常に危険です。 ウォレットを放置していた人たちが、気づかないうちに資産を全て失うというシナリオが現実になってしまうからです。

例えば、10年前にBTCを購入し、放置していた人が、ある日確認してみたら「バーンされていた」―― こうなれば大混乱は避けられません。

現実的な対処法:凍結と個別認証

より現実的な手段としては、量子耐性が導入されたタイミングで、ECDSAベースの取引を凍結するという方式が考えられます。

これはつまり、ハードフォークにより、旧式の署名方式を無効化し、 既存の鍵が破られてもコインが盗まれないようにする措置です。

凍結された正当所有者はどうする?

凍結されたコインに対しては、正当な所有者が身分証明や背景確認などを経て、個別にPQC対応へ移行できるようにします。

このプロセスは一見手間がかかりますが、ハッカーにとっては極めて高い障壁になります。 なぜなら、盗んだ秘密鍵で正当性を証明する書類や履歴を提出することは不可能だからです。

まとめ:バーンという発想の危うさ

「バーンすればいい」という安易な提案が、正当なユーザーの資産すら危険にさらす可能性があるという点を、 我々はもっと重く受け止めるべきです。

量子時代のセキュリティとは、“技術”だけではなく、“設計思想”と“人道的な対応策”が求められる領域なのです。

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