「運用中のドライブ」だけではなく「バックアップ先ドライブ」の定期検査を実施しておりますでしょうか?
実は、「運用中のドライブ」だけではなく、バックアップ先の定期検査も「必須」です。
□ 複数のHDDを接続して運用するRAID、自動的にバックアップを取れるように組み込んだシステム、同時にミラーを生成するミラーリングなどがございます。
□ これらは、シーケンシャルの高速化、データの冗長性などを求めて組まれます。しかしながら、同時に脆弱性を抱え込む原因にもなっておりますので、それを説明いたします。
■ RAIDの仕組みについて
複数のドライブを接続して、同時に処理します。
コンピュータからは1台として認識されます。すなわち、RAIDコントローラが「ドライブ」と見なされます。
〇 通常の構成=> HDD <> コンピュータ
〇 RAID構成=> 複数台のHDD <> RAIDコントローラ <> コンピュータ
□ RAIDの接続方式について、まとめました。
■ RAID-0(ストライピング)
データを一定サイズのブロックで分解して、それらを、接続済みのドライブに、交互に読み書きする方式です。
シーケンシャル速度と容量が向上いたしますが、データ保護能力は一切ありません。
■ RAID-1(ミラーリング)
同一内容を、複数のドライブに読み書きいたします。
このため、台数に関わらず、容量は一定です。台数の分、データの保護能力が向上いたします。
■ RAID-5(パリティ付ストライピング)
データを一定サイズのブロックで分解して、各ドライブから得られるパリティを計算のち、交互に読み書きする方式です。
このパリティから、一台までの破損であれば、パリティおよび生きている各ドライブから、破損した全データを復元できます。
パリティの性質上、三台以上の構成が必要となりますが、一台が破損しても、このパリティにより全データが復元できる利点があります。
■ RAID-10/RAID-01(ミラー&ストライピング)
ミラーおよびストライピングを組み合わせた構成となります。
この組み合わせの都合上、ドライブの台数が大幅に増加(単純に、倍となります)いたします。
■ RAID-6(パリティ付きストライピング)
RAID-5では、パリティが一つでしたが、こちらは二つです。
両方のパリティの演算から、最大二台までの復元(二台までの故障耐性)が可能です。
RAID-10/RAID-01のように台数が膨らまず、便利なのですが、パリティ演算が複雑となるため、「バグ」による損失リスクがあります。
■ 自動バックアップ
以下に登場いたします、
各セクタの分類については、別途、こちらにまとめました。ご参考ください。
自動バックアップでは、「徐々に」各ドライブが劣化する場合、対応できません。以下に、その状況をまとめます。
□ ○ 同期前:
以下数値の順:空データ数, 実データ数, 読み込み不能セクタ数, 書き込み不能セクタ数, 読み書き不能セクタ数
Disk1|90, 10, 00, 00, 00|
Disk2|100, 00, 00, 00, 00|
□ ○ 同期後:
以下数値の順:空データ数, 実データ数, 読み込み不能セクタ数, 書き込み不能セクタ数, 読み書き不能セクタ数
Disk1|90, 10, 00, 00, 00|
Disk2|90, 10, 00, 00, 00|
各数値は全体を100として情報を保持している量を表します。
今回のDisk1は未使用が90、データ使用量が10、その他エラーのセクタはありません。新しいDisk2(新品なので未使用100)にバックアップした様子(同期)です。
■ この自動バックアップが知らない内にデータ損失につながります
バックアップ先のドライブが故障するまで、一切検査せずに使い続けるのは、とても危険です。
実は、この肝心な故障に気が付かない場合がとても多く、それこそ、気が付いたときには、両方とも読めないという現象を沢山確認しております。
このようなデータ損失に至るまでの例を、ここに、まとめます。
□ ○ 新品の状態:
以下数値の順:空データ数, 実データ数, 読み込み不能セクタ数, 書き込み不能セクタ数, 読み書き不能セクタ数
Disk1|55, 45, 00, 00, 00|
Disk2|100, 00, 00, 00, 00|
□ ○ 最初の同期(無事作動確認):
以下数値の順:空データ数, 実データ数, 読み込み不能セクタ数, 書き込み不能セクタ数, 読み書き不能セクタ数
Disk1|55, 45, 00, 00, 00|
Disk2|55, 45, 00, 00, 00|
□ ○ 定期的に使用中、データ量55から80へ(無事作動確認):
以下数値の順:空データ数, 実データ数, 読み込み不能セクタ数, 書き込み不能セクタ数, 読み書き不能セクタ数
Disk1|20, 80, 00, 00, 00|
Disk2|20, 80, 00, 00, 00|
□ ○ 障害の発生(無事作動確認):
以下数値の順:空データ数, 実データ数, 読み込み不能セクタ数, 書き込み不能セクタ数, 読み書き不能セクタ数
Disk1|20, 80, 00, 00, 00|
Disk2|19, 80, 01, 00, 00|
□ ○ 障害の発生2(無事作動確認):
以下数値の順:空データ数, 実データ数, 読み込み不能セクタ数, 書き込み不能セクタ数, 読み書き不能セクタ数
Disk1|20, 80, 00, 00, 00|
Disk2|19, 70, 11, 00, 00|損失10
□ ○ 障害の発生3(無事作動確認):
以下数値の順:空データ数, 実データ数, 読み込み不能セクタ数, 書き込み不能セクタ数, 読み書き不能セクタ数
Disk1|18, 80, 02, 00, 00|
Disk2|15, 64, 21, 00, 00|損失16
□ ○ 障害の発生4(無事作動確認):
以下数値の順:空データ数, 実データ数, 読み込み不能セクタ数, 書き込み不能セクタ数, 読み書き不能セクタ数
Disk1|18, 80, 02, 00, 00|
Disk2|10, 55, 30, 05, 00|損失25
□ ○ 障害の発生5(エラーで停止):
数値の順 空データ数, 実データ数, 読み込み不能セクタ数, 書き込み不能セクタ数, 読み書き不能セクタ数
Disk1|18, 60, 02, 03, 17|損失20
Disk2|10, 55, 30, 05, 00|損失25
□ ○ 障害の発生6(5のエラーを無視、再度エラー、再起不能):
以下数値の順:空データ数, 実データ数, 読み込み不能セクタ数, 書き込み不能セクタ数, 読み書き不能セクタ数
Disk1|00, 00, 00, 00, 100|損失80(ヘッドクラッシュ)
Disk2|10, 35, 50, 05, 00|損失45
■ Disk1(メイン側)が元気なのに対し、Disk2(コピー先)が徐々に弱っていくパターンとなります。
データを書き込んでから、一定時間後に読み込み不能セクタに変化いたします。
同期の場合、ファイル名または更新日時に変化がない場合は書き込みしないため、データ損失が気付かれずに放置されてしまいます。頻繁に更新するファイルは、書き込みの際にセクタが復活致しますし(エラーの場合もあり)、
最終的に読み書き不能セクタになった場合はエラーで停止(書き込み不可)します。ほとんど更新しない(全く更新しない)保存用ファイルなどが影響を受けます。
※ 更新頻度の低い例といたしましては、デジタルカメラの画像などが犠牲となっております。
※ 対策:更新頻度の低いファイルは、できる限り別のメディアにも保存する。
※ NASに接続されたバックアップ外付など、最近は多いですね。
[重要] ミラーリングをバックアップとして利用してはいけません
ミラーリングはバックアップの代わりになりません。
ウイルスやワームによる削除活動、人為的なミスによるデータ損失、論理的な障害については、絶対に防ぐ事ができません。
ドライブに対する見えない消耗が重なり、ドライブを含むシステムが停止したときには、すでに「時遅し」となります。
気が付いたときには、接続されている全ドライブが、破損していたという結果につながる恐れがあります。
RAIDは、稼働時間を延ばして、決められた時間に修理を可能にする利点があります。それゆえに、「バックアップ」機能はサポート対象外です。
■ ドライブの検査について
バックアップ先の劣化を定期的に検査いたしますと、徐々に弱っていくパターンによるデータ損失を防ぐ事ができます。
検査の方は、こちらの完全スキャン[ >> FromHDDtoSSD Ver2.1系 完全スキャン ]をご利用いただけますと幸いです。